増田襲撃編

元亀二年 九月十日 佐吉

しろづかえは仕事がたくさんあってたのしい。
今日はてんしゅかくというところの床をみがいた。
床をみがいていたらまどから
手紙をあしにつけた鳥がはいってきた。
手紙はあんのじょう増田くんからのものだった。

読みたくないけど捨てられない。ちょうびみょう。

元亀二年 九月十一日 佐吉

増田くんからの手紙を、ひらこうかどうか、小姓部屋で考えていたら
市松に見つかった。
市松は、なんにもいわずにどっかにいった。

増田の手紙

親友、佐吉へ

佐吉、元気してるか?
俺はお前がいなくなってから毎日つまらないよ
佐吉の事ばかり考えてたらまた1日終わっちゃった。
お前に会いたいよ
ちくしょう、お前にあって話したいこといっぱいあるのに
手紙じゃ書ききれないどうしたらいいんだ
そうだ9月15日暇だからそっちに遊び行こうと思うんだ。
だからその日予定空けとけよ。じゃあな佐吉
    
                         増田より

元亀二年 九月十三日 佐吉

空けとけよ、と言われても
そうそう簡単にお休みはとれない。仕事ってそういうもんだ。
増田くんにあわなくてすむ…。

…と、思っていたのに、手紙をみていたぼくに
とおりかかったすけさくが
「しんゆうが遊びにくるのか。ならわたしと休みの日を交換しよう」
といってきた。
振り返るとすけさくはうなずいてどこかにいってしまった…。

元亀二年 九月十五日 佐吉

一日待っていたけれど、
増田くんはこなかった。
なんなんだ、あいつ… もうしらない

元亀二年九月十九日 佐吉

城のなかでまよってしまった。
たちおうじょうしていたら、
侍女すがたのおんなのひとが、手をひいて部屋まで連れて行ってくれた。

おんなのひとはおねさまのおつきのかたらしい。
名前をたずねたらちょっと間をおいて
「あずまとよんでおくれ」といった。

あずまさんに増田くんのことをいうと
「分かったよ、あんたをたずねてくるものがいたら
おしえてあげるよ」といってくれた。
なんだか、はなしかたが誰かににているなあと思った。

元亀二年 九月二十日 佐吉

さいきん虎之助や市松のすがたをみないなあと思っていたら
おねさまのおそばで暮らしているらしい。

おねさまというのは殿の奥方だ。
とてもやさしい方らしい。ぼくはすがたをおみかけしたことしかないけど。
うらやましいなあ。

元亀二年 九月二十一日 佐吉

夕方あずまさんにあった。
まんじゅう、というたべものをもらった。
「息子にたべさせてやりたくて、とっておいたんだけど
考えてみたら息子はとおいところにいるんだよ、はは」
だって。とおいところってどこだろう。

まんじゅうは甘くておいしかった!
大谷くんにもわけてあげたかったなあ。

元亀二年 九月二十二日 佐吉

増田くんはどこでどうしているんだろう。
とちゅうで面倒になって寺に帰ったのかな。
手紙くらいよこせばいいのに。

元亀二年 九月二十九日 佐吉

鳥が大谷くんからの手紙を足につけてきた。
思うのだけど、この鳥なんなんだろう?まあいいや。

手紙によると増田くんは十二日ごろに寺をでて
いらいもどっていないそうだ。

だいじょうぶなのか。まさか…

元亀二年 十月一日 佐吉

町におつかいにでたかえり、いきなりうしろから抱きつかれた。
どこのかどかわしかと思ったら増田くんだった!
服や顔がすっごい汚れてた。どうちゅう色々あったらしい。・・・。

やくそくの日を守らないでおいて、心配しただろうとかいうから
なぐって逃げた。あいつ、むかつく!

元亀二年 十月三日 佐吉

大谷くんに増田くんをなぐったのをみられてた
あやまりにいけと言われるかとおもったら
いっしょに明日しゅーげき(?)にいこうていわれた
大谷くんは元気になるとてがつけられないから
明日はたのしみアヘヘ

元亀二年 十月四日 佐吉

増田くんはこじきどうぜんだった
道ゆく人に食べものをすがっていた
酉の刻増田くんをボコした
もちろんばれないように頭巾をつけて後ろから
ボコした。すぐ逃げた。

元亀二年 十月六日 佐吉

今日は増田くんのおそーしきごっこ
みんなで南無阿弥陀物唱えながら
増田くんを地面にうめてあげた
死んだらもったいないので首だけだしてあげた
ケマリが流行ってると色が白いおじさんが
教えてくれたので増田くんの首であそんだ
ちょっと増田くんの声がうざかった
もっとつよくすればよかったな

元亀二年 十月九日 佐吉

今日ひまだからまちをあるいていたら竹中さんにあいました。
「やぁ、げんきそうだね」(ニカッ)
と白い歯を見せながらぼくにかたりかけました。日ごろの不健康そうな外見が
みじんもありません。それでいて羽柴さまの前に出るとやたらせきがでるらしいです。
もしかして・・・羽柴さまのこと・・・
それにしても竹中さんは白い歯だけかっこいいなぁ。

かえってみんなに「やぁ、みんなげんきかい?」(ニカッ)
ってやったらみんな口をあけながらぽかんとしていました。みんなのまぬけづらを
みれておもしろかったけど、それからきゅうにみんなと付き合いにくくなりました。
なんでだろ?

元亀二年 十月十一日 佐吉

昼間あずまさんにあった。
あずまさんは、ぼくが増田くんをしゅうげきしたことを知ってた。
あんたはそういうことをする子じゃないとおもってたのにっていわれた。
ごめんなさい、でもぼく…

きもちがしずんだままろうかをあるいていたら
竹中さんにあった。
おなごはうわさをききつけるのだけは早いから気をつけなさい
といわれた。ぼくは竹中さんがたまにこわい。

元亀二年 十月十二日 佐吉

いそがしかったから増田くんから手紙がとどいたことを今日知った。

親友佐吉へ

ごめんな、佐吉
寺をでたあと変な山賊に絡まれて有り金とおみやげの柿全部持ってかれちゃったよ。
たしか三雲っていってたな。
でもなんとかして絶対長浜までいくから待っててくれよ
あと、寺子屋のときいろいろごめんな、俺皆から嫌われてるの知ってたんだ。
でも、友達欲しくて、皆の注目浴びたいばかりに変なこといっぱいやってた。
ごめんな、                         
                               増田より

この手紙は九月二十日に届いていた。
ぼくは何も知らなくて増田くんを嫌ってボコしてしまった。
増田くんぼくこそごめん

元亀二年 十月十三日 佐吉

大谷くんと会った。あれ?そういえばなんで大谷くんが長浜にいるんだろ。
仕官しに来たのってきいたら
ぼくはやまいもちだから仕官はできないよって笑って言った。
ふかくきくのはやめよう。

増田くんの手紙を見せたら、大谷くんはなんともいえない顔をして
ほんとうかな。ここに書いてあること って言った。
それから頭をぶんってふって
増田くんにあやまりにいこうか って言った。

あしたふたりで増田くんをたずねにいくことにした。

元亀二年十月十四日 佐吉

きょうは大谷くんと増田くんのいえにあやまりにいった
増田くんはわらってゆるしてくれてよかた
そしたら増田くんがなかなおりにお風呂にはいろう
と言ってきた ぼくの家にはお風呂がないから
とてもたのしかった増田くんはえらくなったら
童子をいっぱいあつめてあかすりさせるんだと
にやけたつらで笑ってた
大谷くんの体は・・・ここには書かないほうがいいなあ

元亀二年 十月十五日 佐吉

大谷くんに仕官の話がでた。
どうやらあずまさんがねねさまに頼んだらしい
これからはいっしょにいれるから嬉しい

元亀二年 十月十六日 佐吉

大谷くんといっしょにしごとをしていたら
羽柴さまがお声をかけてくれた。ひとことだったけど、うれしい!

よこを見たら大谷くんが目をきらきらさせていた。
やっぱり羽柴さまかっこういい…。だって。
大谷くんはあいかわらずしゅみがちょっと変だと思った。

元亀二年十月十七日 佐吉

今日もお客さんがきました。佐々さまです。あいかわらずおつむがよわそうな
顔をしていますが羽柴さまぎらいでここへくるとそのかおがすこしまともになります。
竹中さんが供応の相手をなさっていましたがやっぱり開口いちばん、
「やぁ、佐々殿、あいかわらず渋いお顔ですな」(ニカッ)
佐々さまはだまったまんまだ。あれ?どうしたのかな・・・
羽柴さまがきたら竹中さんは急に「ごふっ、ごふぅ・・・」とかたいちょうをくずしはじめて、
「半兵衛、ご苦労だった。座をはずしてよいぞ」と羽柴さまがおっしゃったら
ためらいもなく去っていきました。そしてぼくとすれ違うときに、
「やぁ、佐吉。キミは羽柴さまになるんじゃないよ」(ニカッ)といって去りました。
意味深いなぁ・・・でも、あんしんしてください。少なくとも竹中さんにはならないから・・・。
で、佐々さまの用事ってなんだったんだろう?

元亀二年 十月十八日 佐吉

そういえば長束くんはさわやまへいったそうです。
丹羽さまのところへ行くんだろうって大谷くんが言ってた。
大谷くんはぼくが寺をでたあと、長束くんとなかよくしてたらしくて、長束くんのことをにこにこしながら話してました。

むーん・・・。

元亀二年 十月二十日 佐吉

城内でのふしぎ。
羽柴さまは家来の小六どののことを「小六のだんな」と呼ぶ。
羽柴さまの方がえらいのに・・・へんなの。

元亀二年 十月二一日 佐吉

最近市松と虎之助が妙に威勢が良い
というのも新しい仲間が増えたとか
孫六というらしい
また嫌な奴がふえた。

元亀二年 十月二十五日 佐吉

ひさしぶりに小姓部屋に虎ノ介と市松がやってきた。
孫六は小姓部屋にすんでるから。
虎ノ介はこのひとつきですごく背がのびたとおもう。
しょうじきちょっとこわい。

孫六もらんぼうそうでやだなあと思ってたら
すけさくが「あのこあんなにちいさいのにうまのあつかいがうまいんだって
すごいな」といってきた。すけさくはのんきだ。
あいつらすけさくのことをちょーへんななまえ!って馬鹿にしてるのに…。

元亀二年 十月二十六日 佐吉

きょう、孫六といろいろ話しました。
すんごく無口でこれがあの虎ノ介や市松と仲が良いなんて思えません。
「彼らと仲良くなるにはなんかずば抜けた技がなければな・・・」
と淡々と語ってくれました。細々としゃべるので何行ってるのか判りません。
かれは泳ぎがとくいできょうそうでふたりをさらっと追い抜いたのが気に入られたようです。
でも孫六っていい人柄だと思うはんめん、
これだったらいろいろいじれるかなぁ・・・と思ってしまいました。

元亀二年 十月二十八日 佐吉

今日は羽柴さまからあまった米の売きゃくの仕事をおおせつかった。
あしたはがんばるぞ。こどもだからってなめられないようにしなきゃ。

元亀二年 十一月四日 佐吉

今日、めずらしく、蜂須賀のおやぶんが来た。あいかわらずあぶなそうなひとだ。
子六「おうっ!!佐吉ぃ!きょうからここでおれっちのガキが世話になるぜぇ〜」
千松丸「よ、よろしゅうたのんまんがな〜」
おやぶんの長男で千松丸っていうらしい。でもなんで堺しゃべり?かれ一度も堺なんて
いったことないらしいのに・・・?なんか、ふにゃふにゃでぼけーっとしてそうだ。
うん、危害はなさそうで安心した。てっきりあのおやぶんのこどもだからアレかと・・・

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