紀之介決意の闘病編

元亀四年 三月八日 仙石権兵衛

城の中が騒がしい。はなれ部屋にいても慌てふためいているのがわかる。
俺はというと、今日が取り調べの日なので、どんな風に話したら良いのか考えている。
……が、正直、俺は嘘が苦手で。昔から、嘘をついてもすぐに相手にばれるのが早かった。

殿の御前で申し開きをはじめた。小六の親分が質問し、それに答える形だった。
「治療費の名目で預けた五〇〇貫、おぬしはそのうち三〇〇貫を私用に着服したか?」
「はじめは京で遊びたかったから、大きな銭をもって気分がよくなっていました。けど、遊ぶ前に京女にだまされて、一服もられて銭を持っていかれたんです」
そういうと、殿とか重臣方が大笑いしだした。
「石山で公方の兵の中にそなたの姿を見た、という証言がある。織田から寝返って公方へ渡り、また織田家へ帰参したのか?」
「一銭ももっていなかったので、ただ飯を食わせてもらおうと思った。ところがそこが足利軍とはしらずにいました」
すると、そこではじめて殿が口をひらいた。
「おみゃあは石山で何をみてきた?」
そこで砦の返しとかの工事を話した。
殿も話をききながら、目がどんどんと輝きだしていくのがわかった。
その後も、兵の士気とか、名のある部将の数とか、武器・兵糧のたくわえなどを説明した。
「いや〜〜、いい話を聞けてよかったわい。小六、権兵衛はお主に預けるぞ」
そういって、殿は去っていった。
あとで親分から、
「お前さんは知らずに密偵の役割を果たしていたようだな。おかげで、殿の次の狙いが決まったようだ」
と言われた。はて?俺はそんなつもりはなかったんだけどな。

元亀四年 三月八日 佐吉

伊右衛門さんに紀ノ介をおぶってもらって、京のまなせ先生の医院へかけこむ。
が、しかし、先生はあいにく留守だ、ということを使用人さんから聞いた。
それでも、紀ノ介は口や傷口から出血がひどい。
とうとう紀ノ介は道の真ん中でぐったりしてしまった。
僕は紀ノ介を抱きかかえて、思わず叫んだ。
「だれか、だれか助けてください!誰か助けて!」

人だかりができていたが、その後ろから、ごめんなさい、通してくだされ、といいながら誰かやってきた。
「おや、まぁ、こりゃずいぶんとひどいねぇ」
顔がまん丸で、大きな丸い鼻が印象的なおじさんだった。
その人も医者らしく、紀ノ介を横にさせると、お湯を持ってくるよう野次馬に指示をだしていた。
紀ノ介に白湯を飲ませて、調合した薬を飲ませると、紀ノ介はだいぶ落ち着いてきた。
「もう大丈夫だろうね。汗をたくさんかくことになるから、水を常に飲ませておくことと、着替えを忘れないようにね」
お代金を支払おうと思って、まなせ先生用に持ってきた一〇〇貫を、おじさんに渡した。
「ううん。そんなにいらない。僕の治療はいつも「十六文」と決まっているから」
そういって、小銭を受けとり、そのまま牛に乗って去っていった。

元亀四年 三月八日 孫六

とのが綺麗な小姓を探しているらしい・・・
とのとは「アレ」が一度も無い・・・顔が・・・駄目なのだろうか。

とのが「おお!おぬしに姉か妹はおるか?近い親戚でも良いぞ!何なら母でm
と、いいかけた所へ、ねね様が来られて夕立がふった・・・赤い・・・赤い夕立・・・

かゆ うま

元亀四年 三月十日 佐吉

朝、紀ノ介を大八車に乗せて、まなせ先生のところに行ったが、家はがらんどうだった。
紀ノ介は落ち着いたものの、早くまなせ先生に見せたいことには変わりないので、
困ったなあと思ってとぼとぼ京の道を歩いていると、
同じく大八車に荷物を満載した人が急ぎ足で西に向けて歩いていたのだが、
すれ違いざまに大きな声をあげた。「おい、キノコやないけ?」
紀ノ介も気がついて「ああ、足軽さん」と返事した。
まなせ先生のところで働いていて、おかげで紀ノ介の顔を知っていた人らしい。
「もうすぐ織田の大軍が京を焼き払うちゅうもんで、うちらも京から嵐山の別宅へ
 避難したんや。これからわしも行くで、ついて来」
そういうことだったのか。どうりて京に来て以来街が静かだと思った。
下立売の通りを歩く途中、街の西に逃げようとする人が他にもいっぱいいて、
列のようになっていた。桂川まで来ると、川沿いにあばらやが軒をつらねていた。
あ、それにしてもキノコって何?

別宅に着いた。まなせ先生はご在宅で、紀ノ介を見るなりあおざめて飛び出してきた。
すぐに診てもらったが、「うん、いい薬を手当てしてもらっとる」と感心していた。
さらに「症状が悪くなったのは、刺激の強いものを食べたからだな。
気をつけるように言ったはずだが、いいつけをきけなかったのか!」
とまなせ先生は厳しい顔で紀ノ介を見た。紀ノ介は
「そんなことありません!気をつけてました」とはげしくかぶりをふり、
ずっと一緒に食事を取ったぼくもそんなことはなかったと言いそえた。
「じゃったら…むう、わしにはわからん。うまくいくはずだったのに」
と頭を抱えた。紀ノ介の病、まだまだ難しそうだ。
紀ノ介の静養もあるので、しばらくまなせ先生の家にいることになった。

現職坊主とやらないか? 投稿者:淫乱スナイパー(3月10日 子の刻)

俺は174*83*27、砲術三段・読経四段・衆道免許皆伝、ガチムチの鉄砲名手
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元亀四年 三月十一日 佐吉

「キノコの面倒をみたやつの風貌はどんなだった?」
そう道三先生からたずねられたので答えた。
「背は低くて、ふけ顔で、大きな丸顔で、牛に乗ってました」
そう言うと、先生は急に目つきが変わり、急かすように続きを要求した。
「その人は、やけに大きな丸い鼻をしていなかったか?」
そのとおり、とこたえた。
「まさか……徳本先生が京にいらっしゃったとは」
先生の言う人は、永田徳本というお医者さんらしいんだけど、甲斐にいるはずの人なんだって。

元亀四年 三月十二日 佐吉

嵐山で避難しつつも、今日みたいに市街の診療所にもどる時もある。
僕は療養中の紀ノ介に代わって、道三先生の雑用もするし、患者の面倒もみる。
前から気にはなっていたけど、先生の値段のつけ方はでたらめに近い。
「そーいえば先生、紀ノ介の面倒をみてくれた時は、たしか三千貫でしたよね?でも、なんで一千貫にまけてくれたんですか?」
すると、先生は含み笑いをした。
「フ、そいつはね、あの人がまれに見るおさむらいだからだよ」
答えの言わんとする意味がよくわからなかった。
「つまりね、私が高く値段をふっかける時は、身分を前に押し出して偉そうにする輩ほど、ふっかけてやろうとおもう」
「でも、小一郎さんもおさむらいだよ」
「そう。侍でもあんなに腰の低くて、相手に頭を下げる侍は初めてだよ。おかげで肩透かしをくらって、言いそびれたなぁ」
そういえば、あの時も側で見ていたけど、先生にぺこぺこして必死にお願いしていたっけ。
「お前も頭良さそうだから出世しそうだけど、気をつけろよ。人は謙虚を無くしたら、誰からも助けを受けられず、金だけが頼りになるからな」
ふ〜ん、あの時は内心、必死すぎ、と思って嫌だった。
「で、先生はそんなにお金をもらって、何に使うんですか?」
「ん、それはだね、私にはやりたいことがあって……」
そういう途中で急患がやってきて、話が途切れてしまった。いったい先生は何をしたいんだろう?

元亀四年 三月十二日 大谷紀ノ介

縫合した傷跡がまた開いてしまったので、顔に包帯をしている。
顔を覆う布の感触が、妙に懐かしくて落ち着く。知らず知らずのうちに、すっかり病の身に慣れきっていたんだなぁ。

夕方、佐吉と先生が帰ってきた。
僕の診察をした後、少し間を置いて先生がこう仰った。
「キノコ、はっきり言おう。お前の病を治す術はもうない。
私が尽力して買い集めた薬も、あの時で底を突いてしまった。
しかし、先日お前を助けてくれた徳本先生なら、進行を抑える方法を知っているかもしれん。」

治す術がないと言われた時は、さすがに大きな衝撃が走り、絶望的な気分に襲われた。
でも、僕のために奔走してくれる人がこんなにもいる。
僕は絶対に闘い抜いてやると心に誓った。

三月一二日 曲直瀬道三

キノコの病の再発原因が未だ判明していない。
キノコの病は業病と言われているが、私はそのようなものは信じていない。
「業病」という言葉は、ただの逃げの言葉であると私は思っている。
治療法は有るはずだ。必ずや新しい治療法を探し出してみせる。

そういえば、もう直ぐ織田勢が京の街を焼き払うらしい。
戦か…毎回大勢の人が殺し殺され簡単に散っていく。
こちらは人一人救うのに、こんなにも必死に足掻いているというのに。

三月十三日 佐吉

きのうの夕方、まなせ先生と紀ノ介との会話を盗み聞きして、紀ノ介の病が治らないことを知ってしまった。
どうして紀ノ介がこんな目にあわなくちゃならないの?こんなの酷すぎるよ…
僕は一晩中泣いてしまった。
でも、徳本先生ならなんとかしてくれるようなことも言ってたような…
よし!徳本先生を探しに行こう!絶対に見つけるぞ!

……と意気込んでみたものの、どこから手を付ければいいのかわからない。
頭をかかえて考えあぐねていたら、外から歌が聞こえてきた。
「東へあるけばぁ風がふく〜西に〜あるけばぁ雨がふるぅ〜」
朝から変な人がいるなぁと思いながら、そっと外をのぞいてみた。
むこうから牛にのった人がやって来る。
……あれ?あのいでたちは…徳本先生!?
あまりのことに、僕は呆然としてしまった。
徳本先生は家の前にまで来て立ち止まった。
「あの病のにおいがする。」
徳本先生はそうつぶやくと、薬かごを背負って牛から降りてきた。
そして僕に気付くなり「あぁやっぱり」といった顔をした。

三月十三日 大谷紀ノ介

今朝、突然徳本先生がいらっしゃった。
徳本先生は薬学の専門家で、病人の匂いを嗅ぎ付ける特殊な鼻をお持ちらしい。
徳本先生は、あの時から僕のことを気にかけて探して下さっていたそうだ。
徳本先生は曲直瀬先生と話をされた後に、僕のいる部屋に入って来た。
手早く診察を済ませ、紙に何か書いて曲直瀬先生に手渡した。
「これが手前の存じております、この病の薬の処方であります。
些か調合に難儀するものではありますが、医学界で名高い曲直瀬先生ならば直ぐに習得できることでありましょう。
しかしこれは治すものではなく、あくまで進行を抑えるものであります。
…キノコ殿、どんな医学であれ、生命の不思議さを越えることはできない。
最終的にはお主の気力と生への執着心に掛かっておる。
そのことを何時も頭の片隅に置いておいてくだされ。
…おや、また違う所から病の匂いがだだよって来おったわい。
それでは手前はこの辺りでお暇させてもらうと致します。」

徳本先生はそれだけ話すと、すぐに出て行ってしまった。
外からまた徳本先生の歌が聞こえてくる。
外に目をやると、桜の木が目についた。
花は既に散ってしまっているけど、生まれ変わったように力強い若葉を纏っていた。

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