巨星落つ!?編

元亀三年 12月6日 とだ

今日は、城下に目が、四つの人が来ていると言うので、
溝口さんとうえだくんと見に行った。ポルトガルの人だったが
あれっ?目が本当に四つある・・吃驚していたら、
「なーんだあれか」と言うと、うえだくんは父の看病があるといって
帰っていった。僕と溝口さんは、最後まで最後まで分からなかった。
丹羽様に聞いたら、笑われた。結局なんだったんだろう?

元亀三年 十二月四日未明 増田

わしゃあもうこんなところは懲り懲りじゃ。お虎と大久保のガキには悪いがわしは犬になって牢を抜けることにする。
途中番の者に見つかってしもうたが「なんだこの臭い犬は!」と外に追い出されて却って良かった。
森の中をとぼとぼ歩いていると1軒の明かりが見えた。

「ほうとうの徳栄軒」

おおっ、ちょうど腹が減っていたところだ。わしは蛾のようにその明かりに吸い寄せられていった
中に人はいなかったが奥からオッサンが咳き込む声がきこえた。
「夜分悪いがなんか食わしてくれんかのう」と呼ぶと奥から恰幅のいい坊主頭の親父がでてきた。
こいつがさっきの病人らしい。しかしどこかで見た顔じゃのう
オヤジは湯を沸かしてうどんの用意をし始めた。
「いやあ世間は戦だなんだで騒がしいですなあ」
それとなく原住民から情報を聞き出そうと話を振ったがオヤジは黙ってうどんを煮ている
くそーこうなったら武田不利のニセ情報を流してやる。
「しかしなんですか?こっちの殿様はもうあかんのではないですか?
兵数でも〜既に負けてるんとちがいます?」
するとオヤジの顔色が見る見る真っ赤になっていくではないか
「見れば見るほど怪しい奴め!食らえっ!!」
「ぎゃあああっ!しっ尻が裂けるうっ!?」
「ふんっ!ふんふんっ!!」

まさか・・・この顔、この展開・・・・
「いかにも!わしが徳栄軒信玄である!貴様が織田の間者か!?」
「痛いっ!痛いーっ!!うっ動かないで・・・っ!!」
「嘘を言うな!こんなに股の竿を長く盛り上げおって!いやらしい!本当に織田の家中はいやらしい者ばかりじゃ!」
「あひぃ!しごかないでぇーっ!?助けて佐吉ー!」

なんとわしは敵の大将に捕まってしまったようである
普段自分がしていることを自分がされると辛いのう。
敵が果ててひるんだ隙をわしは命からがら「ほうとうの徳栄軒」から逃げ出したのじゃった。
しかし尻が痛い。とりあえず元いた場所に戻るとするか。後のことはそれから考えよう、とりあえず飯は出るしな。

元亀三年 十二月七日 佐吉

朝一緒に仕事をしている山内さんを迎えに行ったら
「ちっ、千代ーっ!!」
と言いながらこかんをかきむしっていた。
膿が出ているようだった。
きっとけがをしたんだろう。

元亀三年 十二月七日 足長坊主

ヤバイ!マジヤバイ!あれから儂の宝刀が微動だにしない。
源介のぷりちぃーなお尻を前にしても鉛のようだ。

「御屋形様!こんなにしているのに、起たないだなんて!
もうおやりになられたのですね・・・!?浮気者!!」

と、源介に浮気を疑われ、散々だった。これから源介へ手紙を書く。

元亀三年 十二月八日 佐吉

最近影が薄い気がする。いちおう主人公なのに。
助作が「権兵衛さんは佐久間さんのとこに行かなくていいの?」て聞いていた。
権兵衛さんは「あれは講談だから」て言ってた。
何のことだろう。

元亀三年 十二月八日 馬場美濃守

御館様と弾正の様子が妙だ。
何十年も前にも似たような状況があったが、あれは弾正が10代の頃の話だ。
まさか四十を越えた弾正と未だに関係を持っているのだろうか?
なんとも薄気味悪い話だ。昔の弾正はウホッ!だったが、いまは見る影も無い。

まぁ、作戦行動において意見の対立が生じたと思っておこう。

元亀三年 十二月八日 雪 佐吉

あんまり心配なので、小一郎さまに許可をもらって実家の兄貴の様子を見に行ってきた。

実家に近づいてみると、人だかりが集まっている。
もっと近づいてみると、うちの鶏小屋を村の人が見物しているのがわかった。
中は・・・ああ、やはり我が兄、弥三。
鶏小屋の中で、すごい勢いで暴れまわっていた。
小屋の脇では兄貴のごしんぞうさまが細いからだをたてにみっつにおり崩し、
しゃがみこんで顔をおおいながら泣いている。
その脇には小さいころによく遊んでくれた小作のたろべえが、
「ぼっちゃま、わしが余計なことを言ったばかりに、すまねえ!」
とひたすらぼくに謝ってくる。

ともあれ兄に声をかけると、兄はやたらかん高い声で、
「おお佐吉、朝倉・浅井の攻勢はどうじゃ!横山城が落ちたから逃げ帰ってきたか!」
とりあえず事実を伝えよう。
「去る3日、1万の朝倉勢は刀根坂をこえて撤退いたしました。
 雪のため、しばらくは朝倉の出兵もございません。
 おかげでよい正月が送れそうですね」
兄は再び暴れだし、どうしようもないのでひきあげた。
親父が、「おい佐吉、塩を減らしとるが、一向に効き目がないぞ」
というので、おかしいなと思っていたら、かたわらから兄のごしんぞうさまがおどおどと、
「あのお、だんな様がおつけものがほしいとおっしゃっていたのでお届けしたのですが・・・
 やっぱりだめでしたよね?」
このおんな・・・つい腹が立って、きつい口調になった。
「あね上、わかっていながらなんというおろかなことを!
 兄のことを本当に思っていたら、そんなことは普通しないよ!!」
ごしんぞうさまはうすでの顔を真っ赤にして、「もうしわけありませぬ」
と叫ぶとまたしくしく泣き出した。
ぼくはがまんできずにそのままなじりつづけたが、何かこころの中ですごい
気持ちいいものを感じていたのだが、なんだったんだろうな?

元亀三年 十二月九日 佐吉

 今日はすごいものを見ちゃった。
 
 雪が残ってひどく寒い朝だった。石田村から急いで帰ろうと、近道を選ぶ。普段はただの沼で大きく迂回しな

いといけないんだけど、
思ったとおり、厚い氷が張って、飛び跳ねてもビクともしない。
 すべって腰を打たないように気をつけながら歩いていると、遠くから僕を呼ぶ声がした。
「おおい!そこのもの、そなたは木下殿のご家中の方ではござらぬか?」
 ふりかえると、立派な髭をたくわえた高貴なお侍が、四、五人の共をつれてそこに立っていた。

 その人はなんと稲葉さまだった。稲葉さまといったら、先の姉川で勇名を響かせた英雄じゃないか!
 なんでも、大殿がお城にいらっしゃった時に、稲葉様も一緒にいらっしゃっていて、たまたま僕の顔を覚えて

いてくれたらしい。これってすごいよ。
 どうやら虎御前山の本陣にむかって、出陣中だったらしい。
「織田家中で今の我らがあるのも、木下殿のおかげである」
 稲葉様に朝ごはんを誘われちゃった。やっぱ、良いことは朝早くに起きるもんだね。

「ところで、そなたが立ってるところは、沼ではなかったのかな?」
「はい。ですが、昨日の大雪のおかげで、沼も凍ってしまったようです。ほら、このとおり」
 飛び跳ねたり、片足ですべってみたりして、ドッと笑い声がおきた。
「おもしろそうだな。どれ、わしも」
「父上、あまり無理をしないほうが良いですぞ」
「言ったな貞通。ほれこのとおり!」
 稲葉様はがに股で走り出して、氷の上を勢いよくすべりだした。
「う、うおお、ちょ…は、はやいぞ」
 さすがにいくらなんでも、アレは勢いがつきすぎてる。転びそうだったけど、足を大きく開いて、身体を後ろ

にそらして、なんとか稲葉様は耐え切った。
「ど、どうじゃ、稲葉者は、尻餅などつかんのだ!」
 すごいもの、そう、まるで鬼瓦をつけた水鳥が、羽根を大きく羽ばたかせて、わっかを形作ったような。

「稲葉様の羽輪……、稲葉羽輪」

元亀三年 12月9日 とだ

うえだくんのお父さんが、重症になったらしく大変だということで
うえだくんの家に手伝いにいった。そしたら変なおじさんが、
おかゆを食っていた。あれがうえだくんの、おとうさんらしい
いや・・誰が見ても健康そうだけど・・あっという間におかゆ
を平らげたと思ったら、「あー死んでしまう助けてくれ」
と騒いでいた。うえだくんの手伝いをして、帰る最中溝口さんと
「絶対病気じゃないよなぁ」と話しながら帰った。
病気で思い出したけど、最近長束君を見ていない。
どこに居るんだろうか?

元亀三年 十二月十日 佐吉

こころの中ですごい気持ちいいものを感じた感じが忘れられず
そのときを思い出しながら丘から叫んでいた。
下の茂みがガサガサと動くのでなにかと思えば丹羽様が居られた。
これは不味いと思った。









あの気持ちいいのは勘違いだったみたいです。
今はごしんぞうさまの気持ちがよくわかりました。
どうみても、あれより気持ちよいです。丹羽様ありがとうございました。

元亀三年 十二月十三日 佐吉

今日も鶏小屋に人だかりが出来ていてちょー恥ずかしい。
小屋の中では兄上が鶏にあげた菜っ葉を奪い取って食い散らかしている。

人だかりの中に真っ青になって立ち尽くすお葉の姿をがあった。
ああ、なんてこった。
この騒ぎで僕とお葉の縁談が反故になったら僕は一生兄上を呪ってやるからな
石田家もうだめぽ・・・・orz

元亀三年 十二月十日 加藤虎之助

夜半、寒さで寝られずにいると、牢の外の見張りの足軽たちの話す声が聞こえた。
「おい、今日の総攻撃はなんで中止になったか知ってるか?」
「ああ。うわさに聞くところだと、何日か前におやかたさまのご寝所に織田の間者が忍び込み、
 親方さまみずから太刀を取って応戦したはいいが、激しい戦いで精魂尽き果てたために
 体調が戻るまで延期だとかなんとか?」
「ほんとかよ。衆道好きのおやかたさまのこと、間者がみめよき若者で、
 下腹の太刀を取って応戦したせいで、文字どおり精が尽きちゃったんじゃないのか?」
(ばか笑い)

・・・下ネタが好きなのはどこの足軽も同じなんだなあ(苦笑)。
なぜかその後牢の中の増田犬が遠吠えを始めて、うるさくてしょうがなかった。

元亀三年 十二月十五日 佐吉

「もののふに休みなどないのだ!それといつでも褌とけつの穴はきれいにしておけ!」
と言う丹羽様の言葉通り、今日も頑張るぞ!
正直後半の意味はわからなかったけど。

元亀三年 十二月十一日 晴れ 加藤虎之助

昨日の夜以来、増田犬がほえてうるさくてたまらない。
そとの見張りの足軽数人がうるさがって牢から犬をひっぱりだして叩こうとすると、
増田犬は激しく抵抗し、一人の足軽のうでにかみついた。
「いてえ、いてえ」と足軽は腕を振り回していたが、その勢いで増田犬は横に飛ばされて
そのまま傍らの崖から落ちていき、そのまま天竜川に落ちた。
しばらく頭が浮いているのが見えたが、激しい流れのためかいつしか見えなくなった。

牢の俺のわきにはくさい白い布キレだけが残った。
彦左衛門が「おい、もしかすると増田の形見かもしれんでのん。大事にしりんよ」
とにやにやしながら言うので、むかついて彦左衛門の鼻先に布キレを押し付けた。
あまりのくささに彦左衛門は気絶し、おかげで昼飯を二人分食べることができた。

元亀三年 12月12日 とだ

今日は、皆で戦について話し合った。
あさくら家がどーのこうの、羽柴様はサルだの
いろいろ論議していたが、最後の締めに丹羽様が
「まあ一番いいのは、戦の前に長束と・・・・」
と言ってニヤニヤ笑ってた。気のせいだったのだろうか?
その時、どこからともなく殺気がしたのは・・

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